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書評 『白痴』 坂口安吾

25.jpg私の憧れの女性像は、二人の小説の人物に影響されています。
一人は、貞操観念が希薄で自己中で自由奔放で破廉恥な、谷崎潤一郎 『痴人の愛』 のナオミ。
そしてもう一人は、全ての世間の呪縛から自由で、幼く素直で純粋な精神を持つ、この坂口安吾 『白痴』 の白痴女なのです。

戦時中の日本の下町で貧乏生活をしている映画演出家の主人公。
彼はある日から、近所に住む白痴女と成り行きで同棲することになります。
芸術性に憧れてこの仕事に就いた彼には、落胆すべき現実が待ち構えていました。
芸術とは名ばかりで大衆や軍部に迎合し、時代の流行を追いかけるだけの映画企画。
徒党を組んで義理人情で才覚の処理をし、各自の凡庸さを擁護するための相互扶助による才能の貧困の救済組織が幅をきかせる状況。
映画という芸術への情熱をすっかり失ってしまい、漠然と現在の生き方に行き詰まりを感じていた彼は、白痴女と対峙することで自分という人間の、その存在の本質を深く見つめ直すことになるのです。
芸術を夢見ながらも、200円という月給に支配される自分。
無事に支給されるかどうか不安を感じ、将来は200円に限定された女性と結婚し、200円に呪縛された子どもが生まれ、鍋や釜や味噌や米を買うことにも、全てに200円の呪文を負い、生活の外形だけではなく精神も魂も200円に呪縛される自分。
世間体や風評や時代の風潮、愛だの正義だの芸術だのという言葉に呪縛されている自分。
そんな彼は、他者との意思の疎通を全く欠き、絶対の孤独の中に生き、言葉の呪縛から解放され自らの意思を持たないこの白痴女の存在に、家畜や虫けらに対するような侮蔑と同時に、幼くて素直で純粋な心に対する憧れを感じてしまうのです。
その後の大空襲で焼け出される二人。
逃げまどう猛火の中、「死ぬ時は二人一緒だ。この道を真っ直ぐ見つめ、肩にすがってついてくるんだ。」という主人公の言葉に、ごくんと頷く白痴女。
それは、彼女が初めて表した自らの意志であり、一人の人間が誕生した瞬間でありました。
新たな可愛い女が生まれでた新鮮さを感じつつも、焼け野原となった周りを眺める彼は、今までの生活の全てを失ってしまったことに対する安堵を感じると同時に、生きるための全ての希望も何もかも失った喪失感を胸に抱き、全てが面倒くさいと感じながら、とりあえず明日のねぐらを探して歩き出そうと思うのでした。


その昔、もう十何年も前になりますが、同じ会社にとても天然な女性がいました。
ちょっと複雑な説明をしたり、当然常識的に分かる事なので説明を省略したりすると見事にトンチンカンな事をやってのけるので、忙しい人達をイライラさせていましたが、私はそんな彼女を可愛く感じ、いつもほのぼのとした気持ちで眺めていました。
そんな気持ちが伝わるのか、行事や飲み会の時などは彼女がそばにいる機会が多かったように思います。
街中で偶然遭遇した時など、ニコニコの笑顔でこちらに駆け寄り、「ヤマメさん、こんな所でなにしてるんですか~」と、周りの状況を気にせずに大声で話しかけられたりしました。
相手との距離のとり方や会話のやり取りに駆け引きや計算高さが全くなく、ほとんど条件反射のようなストレートな反応に、私は今までで出会ったどの人間像にも当てはまらない超個性的な素直さと純真さを感じるとともに、坂口安吾の白痴女を彷彿とさせる彼女の言動に一種の憧れを感じていたのです。

そんな訳で、白痴女とはいかないまでも、天然系の女性に妙に心惹かれる私。
その背景には坂口安吾のこの小説と、この天然の彼女との出会いが大きく影響しているのです。
その後、彼女のような個性的な女性には出会ったことがありません。

天真爛漫な彼女の笑顔を思い出すと、今でも心が癒されます。
彼女は今も元気に暮らしているのでしょうか・・・


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  1. 2011/10/18(火) 14:05:03|
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Author:山女ひろし
札幌在住
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