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書評 『マイナス・ゼロ』 広瀬 正

29.jpg「タイムマシンに乗って、あの頃に戻ってみたい」
誰もが一度くらいはそう考えたことがあるのではないでしょうか。
それは、懐かしさであったり、悔恨の念であったり、誰かに対する想いであったり、そんなさまざまな想いやそれぞれの事情がそこには存在すると思うのです。
この小説はそんな人々の思いを具体化したような、タイムトラベルを題材にしたSFです。

時は1945年、主人公の少年は、空襲の直撃を受け息絶えようとする隣人の教授から、18年後の今日のこの時間にこの研究室に来て欲しいと遺言されます。
そして18年後の1963年、約束の場所に現れたのは見たこともない機械と空襲の時に行方不明になっていた教授の娘でした。
18年前から全く歳をとった様子がない彼女に戸惑う主人公と、一瞬で戦時中の極限状況から戦後の高度成長期の世界に来てしまい全く状況が飲み込めない彼女とのトンチンカンなやり取りのすえ、二人はこの機械がタイムマシンであることに気付きます。
ちょっとした興味で過去の世界を覗いてみようと思った主人公は、ひとりで31年前の世界に降り立つのですが、トラブルが発生しその世界に置き去りにされてしまいます。
おそらく2年後にはタイムマシンを発明した未来人であろうと思われる教授がこの地にやってくると予想した彼は、自分で研究室を設計し、この時代の人間になりきってその機会を伺います。
しかし、裏社会を通じてこの時代の戸籍を取得していた彼に召集令状が来てしまいます。
兵役に就き終戦まで戦地にいた彼は教授とすれ違いになり、結局この時代の人として生きていくことになってしまいます。
戦後復員してきた彼は、その後研究室の建物を間借りしている女優と結婚し、おそらく十数年後にここに来るであろう自分を待つことにします。
1963年、彼は、軽い気持ちで31年前の世界へ行こうとする若いころの自分を止めようと思っていたのですが、様々な偶然が重なり彼は予定通り31年前に行ってしまいます。
そしてその後、1963年に残された教授の娘をめぐり、彼女の驚愕の事実が明らかにされていくのです。

タイムトラベルものは時代が前後するためにパラドックスがつきものなのですが、正直この小説も整合性があるのか無いのかわからなくなるくらい頭の中が混乱してきます。
直感的にはこの話はどこかおかしいと感じている自分がいるのですが、考えれば考えるほど正しいような気がしてきます。
まるでアキレスと亀の話のようです。

この作品は、主人公が体験する1932(昭和7)年当時の東京の街並みと、そこに暮らす人々の昔ながらの江戸っ子気質と人情が活き活きと描写されていています。
そしてそれが、戦中戦後を通してどのように変わっていって、現在どうなっているのかが克明に描かれているのです。
日本史に出てくるような戦国時代や幕末の騒乱の時代ではなく、ついこの前の日常の世界へのタイムトラベルという描写が逆に現実味を感じさせます。
この作品を読むと、自分がタイムマシンに乗ってその時代に降り立ったかのような気になってくるのです。

残念なことに、この作者は1972年に亡くなっています。
現在、タイムトラベルを扱った作品は数多くありますが、この作品は1924に東京で生まれ銀座で育った生粋の江戸っ子である作者にしか描くことのできない、SFなのに人情味あふれる日本的SF作品であると私は思うのです。




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  1. 2011/11/15(火) 12:49:15|
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山女ひろし

Author:山女ひろし
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