がやがや2

----------  大人の秘密結社 『がやがや倶楽部』 WEB 版 ---------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

書評 『失踪日記2 アル中病棟』 吾妻ひでお

1381166486375.jpg私が大学時代を過ごし自分の人生の転換期だった1980年代初頭は、人々のサブカルチャーへの意識が劇的に変化した、世の中が大きくパラダイムシフトした社会の大きな転換期でもありました。
そんな時代にマンガの分野でロリコンブームを牽引し、不条理でSFで哲学的で幻想的で、この時代そのものを体現していた、時代の寵児であった吾妻ひでお。
『おたく』という言葉がまだなかったあの頃、まぎれもなくマンガマニアだった私は吾妻ひでおを信奉していたアズマニアでもありました。
そんな吾妻ひでおの世界が、ルーズソックスとミニスカのセーラー服という形で現実化した1990年代、世の中にあふれかえるアズマンガキャラとは裏腹に、吾妻ひでおは社会の表舞台から姿を消すのでした。
それは奇しくも、生活面でも精神面でも自分を消し、家庭という新たな生活をスタートせざるを得なかった私の人生とシンクロしているかのようでした。

その間の吾妻ひでおは、失踪・放浪生活の後、アル中による入院生活を経て、2005年に『失踪日記』により、今までとは全く違う形で社会に復帰を果たしました。
本書は、そんな吾妻ひでおが前作『失踪日記』発行後8年をかけて描きあげた、アル中病棟での闘病生活を描いた320ページにもわたる超大作です。

アメリカの映画では、薬物中毒者を更生させるための施設や中毒患者たちが自分の体験を告白するという会合などがよく出てきますが、ここに描かれているアル中病棟での話はそれと全く同じで、日本でもあの映画と同じことが行われているということがまず驚きで、まるで映画を見ているようです。
アル中患者たちの病院内での行動や、それらの人たちとの関わり、1週間の細かいスケジュールや、暗黙のルールを含めた入院生活での規則など、こと細かいところまで精密に表現されています。
自身が入院患者ですので、精神的な不安やアルコールによる幻覚や治療薬による影響などがリアルに表現されていますが、そんな自分をも俯瞰している立場から描いているので、主観が入りながらも自分を突き放して見た視点からの描写は、返ってこの作品の怖さを際立たせています。

それにしても、吾妻ひでおのあの丸っこいギャグ調の絵柄だからまだ緩和されていますが、これが劇画調の絵柄だったらツラすぎて最後まで読めたかどうかってところでしょうか。
この作品に登場する吾妻ひでおは、実物の吾妻ひでおとは違ってキャラクターであり、そういう意味ではこの作品はノンフィクションではなく創作であると思います。
私小説ならぬ私マンガとでもいうのでしょうか。
その読後感はまるで、淡々とした描写で時折ギャグ的な表現を用いながら凄惨な内面を綴った太宰治の作品を読んだ時のような感じでありました。

今は、時代の文脈も社会の物語性も吾妻ひでお本人も、80年代のあの頃とは全く変わってしまいました。
『失踪日記』以降この『アル中病棟』まで何冊かの本が出版されて、それなりに売れているようですが、新たな時代の寵児となるなんてことにはならず今後も気負うことなく淡々とのんびりと、この調子で作品を発表し続けて欲しいと私は願っているのです。



スポンサーサイト
  1. 2013/10/31(木) 11:08:37|
  2. 書評
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
次のページ

プロフィール

山女ひろし

Author:山女ひろし
札幌在住
自由人

カレンダー

09 | 2013/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。