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書評 『ひとめあなたに・・・』 新井素子

21.jpg「1週間後に隕石が衝突し、地球が滅亡する」
そんな 『ディープ・インパクト』 や 『アルマゲドン』 のような極限状況の中で、主人公の圭子が最期に彼氏に会うためだけに、パニックと狂気で混乱する中を、自宅がある練馬から彼氏の住む鎌倉まで歩いて行く物語です。
彼女は、その強行軍の途中で様々な女性と巡り会います。
妻を捨てて浮気相手とともに最期を迎えようとする夫を刺し殺し、遺体を解体してシチューにし、愛する夫を永遠に自分の中に取り込もうとする妻。
母親の言いなりになることを自ら選択し、10年以上もひたすら受験勉強をしてきたために、あと数日で地球が滅亡するにもかかわらず、参考書を片時も離さずに受験勉強をし続ける女子高生。
クラスメイトとの付き合いが上手くできず睡眠へと逃避し、両親が死んでも、周りの人が死んでも、地球が滅亡しようとも、この世は自分が見ている夢である事を証明するためにひたすら眠り続ける小学生の少女。
愛する夫を裏切って、元彼と一緒に核シェルターに入ってでもお腹の中の児を必死で守ろうとする妻。
普段の平穏な日常の中では決して表に出てこない女性の内面が、極限状況の中で狂気として噴出していく様を見事に描き出しています。
この作品は、新井素子が20歳の時に書いた作品です。
でも、とてもハタチの女の子が書いたとは思えないスバラシイ描写力です。
私がハタチの時なんて何も考えていませんでしたから。

私がこの作品を読んだのは1985年の大学生の時です。
新井素子はSF作家として17歳でデビューしていますが、当時、主にコバルト文庫から作品が出ていました。
ライトノベルの元祖でもあり、その独特の文体と表現方法は 『文字によるマンガ』 と評され、谷山浩子のオールナイトニッポンの人気漫画家ランキングで、小説家なのに常に上位にランクインしていました。
少女マンガ好きの私は、コバルト文庫の新井素子のラブコメ作品を全て読んでいましたが、ラブコメとは違う狂気的で猟奇的なこの作品に衝撃を受け、新井素子をSF作家としてあらためて再評価したのを覚えています。

これを初めて読んだ大学生の時には気付きませんでしたが、今読み返すと作者が若い時に書いた作品であるということが、細かい枝葉末節の部分の描写で分かります。
おそらく、現在51歳の作者が同じ作品を書いたと仮定したら、もっと状況設定や構成やバランスに配慮した作品になるでしょう。
しかしこの作品は、それらを差し引いても余りあるパワーと勢いと若いエネルギーが感じられる、ハタチの作者だからこそ書き得た作品であると思うのです。


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テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/09/16(金) 07:54:41|
  2. 書評
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

これは面白そうだね。
参考書を離さずに受験勉強を続ける女子高生って悲しいですね・・・。当時の受験戦争は今よりはるかに厳しくて、その弊害がアチコチで議論されていましたけど、SF作品の中でチクリと刺すあたり、新井素子さんはさすがですね。
彼女はいま51歳ですか。同世代といってもいいですね。
最近はどんな小説を書いているのかな。機会があれば紹介してください。
  1. URL |
  2. 2011/09/16(金) 17:14:43 |
  3. クマコー #e0R/wPJE
  4. [ 編集 ]

最近ですか。

文庫本では4~5年前に『ハッピー・バースデイ』という本が角川文庫から出ていますね。
これはSFではなく、どっちかというとホラー小説でしょうかね。
あのいつもの新井文体でホラーを書かれると、よけいに怖さが増幅しますよ。
日常会話的な文体であるがゆえに、普段は遠くにある恐怖や狂気がより身近に感じてしまいます。
そういう点では、この『ひとめあなたに・・・』に通じるものがあるかもしれません。
  1. URL |
  2. 2011/09/16(金) 19:59:20 |
  3. ヤマメ #m3ZOdJy6
  4. [ 編集 ]

非常時なのにほんわか

ヤマメさん、いい本ですねー。よくみつけらるものですねー。私も読んでみたい。ではでは
  1. URL |
  2. 2011/09/28(水) 09:39:54 |
  3. リリー・スー #-
  4. [ 編集 ]

うれしー

リリー・スーさん、コメントありがとうございます。
そう言っていただけると光栄です。
これからもよろしくおねがいします。
  1. URL |
  2. 2011/09/28(水) 10:43:35 |
  3. ヤマメ #m3ZOdJy6
  4. [ 編集 ]

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