がやがや2

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書評 『ボクの初体験』全3巻 弓月光

24.jpgこのマンガは、1975年に週刊マーガレットに連載されていた、男女入れ替わり学園ドタバタコメディです。
クラスの女子にイジメられ、崖から飛び降り自殺を謀った主人公の少年。
早朝の海岸に打ち上げられていたその少年を助けたのは、幼い妻を脳腫瘍で失くし悲しみに暮れている孤高の天才脳外科医でした。
愛する妻を蘇らせることしか頭にない彼は、こともあろうにこの少年の脳髄を妻の亡骸に移植してしまいます。
こうして、『体は女、頭脳は男』 として蘇った美少女少年は、自分をいじめた女子に復讐すべく、外見は女性となって学園へと舞い戻るのです。
着々と復讐を進める美少女少年。
思い通りに事態が進むことに舞い上がっていた美少女少年は、小躍りしながら車道に飛び出しトラックに轢かれそうになります。
身代わりになり、トラックにはねられるイジメ首謀者の女子。
脳外科医の博士は、今度は彼女を助けるために生命維持装置で保管していた少年の体にこの女子の脳髄を移植してしまうのです。
こうして誕生したイケメン少女。
その後、美少女少年とイケメン少女は奇妙な学園生活を繰り広げ、先生に扮した隠密捜査の刑事との駆け引きや、美少女少年の妊娠・出産を経て、元通りの大団円を迎えます。

このマンガが連載されていた当時、私は中学1年生でした。
そんな思春期真ッ只中の私の頭の中には、 『男性の意識のまま女性になってみたい』 という妄想と、 『意識も体も完全な女性になってみたい』 という妄想が渦巻いていました。
そんな妄想を実現させたにもかかわらず、女性になった自分の体を見ることができない純情すぎるこの主人公に、私は焦れったさともどかしさと羨ましさが混じった複雑な感情を抱いていたのを覚えています。

今読み返すと、ただ単に面白おかしいコメディなのですが、読むと同時に当時の自分が甦ってきます。
脳移植というありえない設定であるにもかかわらず、このマンガに完全に入り込んでしまった私は、この後訪れる第二次性徴時の自我の形成に大きな影響を及ぼし、男性部分と女性部分の分化が出来ずに、しばらくの期間その部分が混沌としたままの状態になっていたように思います。
男性として女性が好きな自分と、女性として女性が好きな自分。
男性として男性が好きな自分と、女性として男性が好きな自分。
それらが渾然一体となって自分の中に共存し、様々な感情の起伏に困惑し迷走していたのが、つい先日のように感じます。

一歩間違えばマイノリティへの道を歩んでいたかもしれない私にとって、このマンガはコメディなのに強烈な猛毒を含んだ禁断の一冊なのです。



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  1. 2011/10/12(水) 09:23:34|
  2. 書評
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

これまた面白そうな漫画を紹介してくれましたね。見たいけどどこかで手に入るかな?
それはそうと、ヤマメさんの少年時代、しっかりと屈折していたんですね。
たとえばプロレスが好きな自分は男性であり、エスニック系美少女が好きな自分は女性? その逆かな?
う~ん、なんかその感性が不思議で面白いね。きのう紹介してくれた麻婆豆腐は、女性として男性に食べさせたいわけ? まあそのあたりが混沌としていて、答えは日によって違うのかな。
でも案外、妙な自分を省みつつ、実はそれを楽しんでいたりするでしょ、きっと。
  1. URL |
  2. 2011/10/12(水) 15:42:57 |
  3. クマコー #e0R/wPJE
  4. [ 編集 ]

貸しますよ

いやいやクマさん。ネタですよ、ネタ。
本当の私は、つまらないくらいまともな人ですから。
まあ、確かに中性的な人は好きですけどねぇ。

古い漫画なんで、もう書店には売ってないかもしれませんね。
アマゾンなら中古品売ってるかもしれません。
もしあれなら、次の飲み会の時に私の本お貸ししますよ。
  1. URL |
  2. 2011/10/12(水) 16:36:04 |
  3. ヤマメ #m3ZOdJy6
  4. [ 編集 ]

本にしろ漫画にしろ(もちろん人もか)、人生での出会うタイミングは重要だよね。
しかしこの漫画により情操面で混沌としたというから、ヤマメは大したもんだ。私の情操教育の大半は、普通に「がきデカ」だったからさ。
でも思うに、野球選手にあこがれて草野球チームに入るのと同様に、女性にあこがれて、性的対象としてではなくそのものズバリ女性になろうとすることは、その年齢においては当然ありでしょう。
そして、そのぐらいから、自分と異なる性の部分が心の奥に沈降していくのだろうね。
でもそれは決してなくなるものではなく、青年期以降も、たとえば対人関係や性的な嗜好等に、陰ながら影響しているのでしょう。
そんな意味でも、自分の多感期にアイデンティティの危機をもたらした作品がハッキリしていて、そしてそれがあるってことは、いいことだ。
しかしよく手元に残ってたな。まぁ私も「がきデカ」いまだに所有してるけどさ。
  1. URL |
  2. 2011/10/13(木) 10:01:07 |
  3. 藤伸一 #-
  4. [ 編集 ]

がきデカ

がきデカですか。
そういえば、あのマンガ、なんかエロいですよね。
懐かしいですねぇ~、当時みんなで 「死刑!」 なんて言ってふざけていましたよ。
それにしても、北海道のオホーツクの片田舎から九州まで、全国で一斉に流行するっていうのはすごいですよね。
  1. URL |
  2. 2011/10/13(木) 11:08:00 |
  3. ヤマメ #m3ZOdJy6
  4. [ 編集 ]

そうそう。あの頃は津々浦々、似たものを見て感じて育ったわけさ。
北に住んでいても南に住んでいても、同じヌードポスターを見て、同じように欲情に駆られるというのは、ある意味とっても健全だよね。
  1. URL |
  2. 2011/10/13(木) 11:42:11 |
  3. 藤伸一 #-
  4. [ 編集 ]

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