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書評 『密会』 安部公房

31.jpg今では活字中毒と言われるくらい毎日何らかの本を読んでいる私ですが、高校3年までの私はテレビばかり見ていてマンガしか読まない、活字離れの嘆かわしいイマドキの若者でした。
そんな私が、現在のように活字の世界にどっぷりと浸るようになったのは、高校の国語の教科書に掲載されていた安部公房の 『棒』 という短編小説と出会ったからでした。
子どもには到底理解できないような複雑な心理描写を、日常では決して使用しないような難解な言葉で綴る近代日本文学。
そんな難しくてお堅い文学が満載の国語の教科書の中で、他の小説とは一線を画したそのシュールで荒唐無稽な安部公房の小説は、無意識の中に隠れ潜んでいた自分でも気づかなかった別の自分を見事に鷲掴みにしてしまったのです。
それ以来、私はすっかり安部公房のファンになってしまいました。

この小説は、そんな安部公房が晩年に書いた、文学を装ったエロ小説です。
ある日の早朝、突然やって来た救急車に連れ去られ、そのまま消えてしまった主人公の妻。
突然の出来事に戸惑う彼は必死に妻を探すのですが、そんな彼が懸命の捜索の末辿り着いたのは、とある巨大な病院でした。

あらゆる場所に仕掛けられている盗聴マイク。
人間関係神経症の果てに ED となり、その治療のために腰の部分に他人の下半身を接合した2本のペニスを持つ 『馬人間』 の副院長。
試験管ベビーとして育ったのが原因で不感症になった冷血の女秘書。
徐々に骨が溶ける溶骨症という奇病に冒され、次第に全身が粘土の塊のようになっていく、魔性のような性的魅力を持った13歳のおさげの少女。
大勢の見物人がひしめく舞台の上でショーとして性行為が行われる病院の創立記念祭。

そんな非現実的な環境で、異形で異常な人間たちを相手に妻を探す一人まともな主人公。
彼は妻を探すための近道として、盗聴マイクで録音された自分の行動をノートに書き写し報告するという仕事を引受け、そうすることによって次第に病院側の人間として取り込まれていってしまうのです。
記録されたノートの記述と彼の独白。
ホントとウソがごちゃ混ぜとなり、時系列を超えたくるくると目まぐるしく変わる場面転換により、何が真実で何が幻想なのか読み進めていくほどに頭が混乱していきます。
読後になぜか、やるせなさと消失感と悲しさが溢れてくるこの小説は、エログロ・ナンセンスで滅茶苦茶な、ある種のドタバタ・スラップスティック・コメディと言えるのかもしれません。

私がこの作品を読んだのは20歳の時です。
当時の私は、その内容のエロさと過激さと設定の滅茶苦茶さに、筒井康隆の小説を読んでいるような錯覚に陥り、読んでいる途中に何度も表紙を確認したことを覚えています。
今回二十数年ぶりに読み返してみたのですが、 『エロ小説』 という記憶しか残っていなかったこの作品も、この歳になって読んでみるとそれほどのものではありませんでした。
一般社会では異常と言われるような極端な状況をあえて描くことによって、人間にとっての性は自然の本能ではなく、脳髄や言語によって創り出された、常にシチュエーションを必要とする特殊なものであるということを浮き彫りにしています。
めまぐるしくて飽きのこない話の展開と組み立ては、とても緻密に計算され考え尽くされており、まるでテンポの良い映画を見ているかのようです。

文学界に確固たる地位を築き、幻想文学・前衛文学として世界的な評価を得ている安部公房。
しかし私にとって安部公房は、漫画的でSFでマイノリティでアングラな、文学とは対極いるような、そんな憧れの存在なのです。



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  1. 2011/11/30(水) 22:39:55|
  2. 書評
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

九州でも同じ教科書だったな。
たしか筑摩のだっけ。
「棒」懐かしいね。
安部公房はその昔、「壁」は読んだし、「砂の女」の映画も見たはずなのだが、いかんせん追憶のかなたでなにも出てこない。
その当時、全く理解不能だったのか、それとも抒情的な嗜好に偏っていたからだろうか。
しかしこうやって紹介されると、俄然食指が動くな。
また宿題か。
  1. URL |
  2. 2011/12/02(金) 16:14:07 |
  3. 藤伸一 #-
  4. [ 編集 ]

こんばんは。「密会」は読んでないです。どんどん読みたくなる本がたまってしまいますう。今読んでるのは道尾秀介の「片眼の猿」です。ではでは
  1. URL |
  2. 2011/12/02(金) 17:22:54 |
  3. リリー・スー #-
  4. [ 編集 ]

藤さん、コメントありがとうございます。
これで藤さんも『がやがや読書クラブ』の一員ですよ。
次は投稿お願いします。

リリー・スーさん、毎度コメントありがとうございます。
私も、これ書きながら読んでいるので、新刊本がどんどん溜まっています。
  1. URL |
  2. 2011/12/02(金) 19:57:53 |
  3. ヤマメ #m3ZOdJy6
  4. [ 編集 ]

安部公房ってこんな作家だったんだ、ってわかった気になりました。「密会」も読んでみたいな。
話の続きは忘年会でもやりながら・・・
  1. URL |
  2. 2011/12/05(月) 10:34:33 |
  3. クマコー #-
  4. [ 編集 ]

毎度様です。
やりましょう、忘年会。
  1. URL |
  2. 2011/12/05(月) 14:02:22 |
  3. ヤマメ #m3ZOdJy6
  4. [ 編集 ]

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