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書評 『夜のピクニック』 恩田陸

33.jpg「文化祭とか体育祭とか、高校の行事って絶妙のタイミングで配置されていたよね。」
毎日毎日、退屈な日常の繰り返しである社会人生活を送っていた頃、高校生の時を振り返ってみて、そう思ったことがありました。
登校して授業を受けて家に帰るという退屈な日常から解放され、普段は見られないようなクラスメイトの意外な一面に親近感を持ったり仲間意識を感じたり、そんな心のやりとりが行事を通して培っていたように思います。
この作品は、誰もが持っているそんな昔の高校時代の記憶を、その時感じていた自分の想いとともに、ついこの間の出来事のように思い起こさせてくれる、そんなノスタルジックな作品です。

高校3年生の時に同じクラスになった主人公の二人。
彼らは、本妻の息子と妾の娘という異母兄妹の間柄でした。
母親の生き方を理解し、受け入れて、自分という存在に全く引け目を感じていない彼女に対し、無責任でだらしない父親の生き方を恥だと感じている彼。
自分たちの責任ではないことを頭では理解しつつも、さまざまなな想いが沸き上がってきて感情的な整理がつかない彼は、クラスメイトである彼女をずっと避け続けるのでした。
そんな状況で迎えた高校生活最後の行事 『歩行祭』 。
80キロの道のりを24時間かけて歩き通すという、彼らが通っている高校のこの伝統行事で、彼女はあることを決意します。
それは 「彼に話しけて返事をしてもらう」 ということでした。
80キロを歩き続けるという肉体的疲労。
夜の星空の下を友人と歩き続けるという非日常のシチュエーション。
彼らの友人たちが繰り広げる誤解と企みとお節介。
それらが渾然一体となって意外な展開を見せながら物語は進んでいき、初めて言葉を交わした彼と彼女は、それぞれが持っていた相手に対する想いを掛け値なく語り合うのでした。

この物語は、事件もトリックもドンデン返しも何もない、最初から最後までただただ歩き続けるだけの、ただそれだけの物語です。
それでもこの物語に引き込まれてしまうのは、ここに描写されている友人たちとの関係性や細かいやりとりが、誰もが高校生の時に一度は経験したことがあるような、身につまされるようなことだからなのかもしれません。

私が通っていた高校では、72キロを13時間で走り切るという、この 『歩行祭』 に似たような 『強行遠足』 という伝統行事がありましたが、この作品を読んで思い出されたのはその時の肉体的苦痛ではなく、3年間のクラスメイトたちとの心の交流であり、わずか24時間のことを綴ったこの物語の中に、自分の高校生活のすべてが凝縮されているような気がするのです。
この作品を読んだ後、私は今まで記憶の奥底に眠っていた高校時代のクラスメイトの女子への想いが鮮明に甦ってきて、妙な懐かしさに襲われてしまいました。
あの時隣の席だった彼女と交わした授業中の筆談は、今思うととても不思議な体験でした。

高校生の時には 「なんでこんな行事があるんだろう」 とか、「なんでこの人と同じクラスになったんだろう」 とか、肉体的にも精神的にも辛いことがあったはずなのに、今思い出すのは楽しかった記憶ばかりです。
読む人をハッピーな気分にさせ、読後に楽しさに満ちた昔の記憶を思い起こさせてくれる。
この作品は、そんなほのぼのとした、懐かしさが漂う作品なのです。



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  1. 2012/01/17(火) 12:26:28|
  2. 書評
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

なにかしでかせば、17歳というだけで動機が成立するような危うくスリリングな年頃。
当時はそんな疾風怒濤の渦中で右も左もわからなかったが、その年代を遠目に見れるようになると、そんな崖っぷちに立っていた頃が、ピュアで透明感をもって思い出されたりするものだ。
私はこの作品は映画で観ただけだが、原作の味はよく表現されていたのではないだろうか。ヤマメのいうとおり、とてもおもしろかったしね。
2足歩行こそが人類が人類になる基本条件であっただろうが、今もって、歩くことで人は考えを新たにできるし、歩くだけで成長するのかもしれない。
そしてそこに、ドラマも生じると。
  1. URL |
  2. 2012/01/18(水) 15:39:52 |
  3. 藤伸一 #-
  4. [ 編集 ]

これはヤマメさんにとっては感情移入しやすい物語だったのかもしれませんね。ヤマメさんの母校の『強行遠足』 、先日テレビでやってましたね。高校生たちのひたむきな姿に感動しましたよ。
今、はたして何キロくらい歩けるのかな。たった一人で歩くなら10キロくらいで「もういいや」ってなりそうだね。
  1. URL |
  2. 2012/01/18(水) 16:36:04 |
  3. クマコー #-
  4. [ 編集 ]

藤さん、毎度さんです。
長距離を歩いていると、頭の中で、「なぜ、自分は今歩いているのだろうか」という自己探求が始まり、それが歩いている間じゅうずっと、延々と限りなく思考が繰り返されるんですよ。
歩くこととは哲学することかも。
なんちゃって~


クマさん、毎度コメントありがとうございます。
私は1年半程前、江別まで20キロ強の道のりを3時間かけて歩きましたよ。
確かに最後は涙目で歩いてましたね。
  1. URL |
  2. 2012/01/19(木) 10:45:42 |
  3. ヤマメ #m3ZOdJy6
  4. [ 編集 ]

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